Point
映画『千と千尋の神隠し』の雑学がわかる!
映画『千と千尋の神隠し』の豆知識がわかる!
映画『千と千尋の神隠し』の裏設定がわかる!
雑学
千尋は実は名前を奪われていない
油屋に迷い込み、湯婆婆の契約書にサインするシーンで、千尋は名前を間違えていた。
正しくは「荻野千尋」だが、千尋は「获野千尋」と書いてしまっている。
「荻(火)」が「获(犬)」になっていたため、千尋は湯婆婆から名前を奪われず、支配されなかったと言われている。
10歳だから仕方がないとも思えるが、実際のところ、そのような設定はあったのか?
宮﨑駿の絵コンテ段階から、その通り(間違って)記載されており、作画スタッフのミスではなく、演出上の狙いとされてきた。
しかし、20年以上経った舞台版『千と千尋の神隠し』で鈴木敏夫プロデューサーは「間違った文字だから、これを直したい」と発言。
原画の米林宏昌も「予告で見つけたけど直されることはなかった」と、Xで投稿。
単なる宮崎駿自身の書き違えが、物語に深みを与えていたのである。
もっとも契約書というのは、合意内容を解釈するための材料・合意の証拠であり、多少の誤字や脱字があっても効力があるが、本件のような、名前が契約上重要な誤字脱字の場合はどうなってしまうのか。
豆知識
企画当初、全く違う物語だった
煙突描きのリン
18歳の女の子と60歳の老人の恋物語だったのだ。
スタジオジブリは、柏葉幸子さんの児童文学『霧のむこうのふしぎな町』を検討していた。
小学6年生の少女リナが、霧の森を抜け、洋館が立ち並ぶ不思議な町で魔法使いの末裔たちの商店街で働きはじめるという話だ。
(実は『耳をすませば』のあるシーンで、天沢聖司がこの本を図書館で読んでいる。)
宮崎駿は、これを元に『ゴチャガチャ通りのリナ』という企画に取り組むが、頓挫する。
次に取り組んだ企画が『煙突描きのリン』だ。
銭湯の煙突に絵を描く18歳の画学生リンが、東京を影で支配する集団と戦うという物語。
宮崎をモデルにしたキャラクター(60歳)と、主人公リン(18歳)が歳の差を超えて恋に落ちる展開が考えられていた。
鈴木敏夫は「如何なものか」と思ってはいたものの、宮崎に「進めておいてください」と返答。
宮崎は1年間に渡り『煙突描きのリン』のイメージボードを描きまくっていたが、1999年に突如この企画は中止となる。
(ちなみに、このリンは「千と千尋の神隠し」に登場するリンへ継承されている。)
千尋は実在の少女
「煙突描きのリン」はどのように「千と千尋の神隠し」に変更となったのか?
実は、実在の少女への思い入れが宮崎を動かしたのだった。
プロデューサーの鈴木敏夫は、当時大ヒット中の『踊る大捜査線 THE MOVIE』を観てこう考えた。
「これが現代か。」
宮崎が1年間描き続けた『煙突描きのリン』の若い女性は、現代の若者像として説得力がない。
「この企画はダメだってことだろう」
そう悟った宮崎は「千晶の話でもやろうか」と提案する。
千晶とは、当時の日本テレビプロデューサー奥田誠司の娘だ。
千尋が川で靴を落としてしまったエピソードは、宮崎の別荘地に千晶を招いた際の実際のエピソードだという。
宮崎は千晶を気に入っており、彼女の生きる道を指し示す、そんな映画が出来ないかと考えた。
こうして『霧のむこうのふしぎの町』と『煙突描きのリン』に、実在の少女の要素が入り混じって『千と千尋の神隠し』は完成した。
湯婆婆と銭婆は双子
なぜこの姉妹は、双子という設定になったのか。
物語上は双子である必要性はなく、まったく別の姿の婆がいたほうが、わかりやすかったのではないだろうか。しかし、ジブリはこの2つのキャラクターを双子にせざるを得なかった。
それは、タイトなスケジュールと、キャラクターデザインの問題だ。
鈴木敏夫が参加したLINELIVEの対談で、双子にした理由が明らかになっている。
「湯婆婆のあとに、二人くらい強い婆がいましたもんね、最初。それと戦う話だったんですよ。」
「銭婆って出てくるじゃない。知ってる? 宮さんが一所懸命キャラクター描いてたの。内緒でキャラクター描いてて、上手くいかないっていうの覚えてる?」
「覚えてます、覚えてます。」
「それで、どうしたか知ってる? 上手くいかないから双子にしようって(笑)。」
「キャラクターが作れなかったんですね。作れなかったから双子になった。」
「ああいう思考回路って、どうなってんだろう。」
「わかんない。パッとつじつま合わせるよね。」
裏設定
湯婆婆と銭婆の違い
作画監督を務めた安藤雅司は銭婆について、『THE ART OF Spirited Away』の中で次のように明かしている。
銭婆の初期デザインは湯婆婆よりも背が高く、スレンダーなイメージで描かれており、銭婆は”7等身でよくできた姉”、湯婆婆は”2頭身でコンプレックスを持っている妹”として構想されていた。
物語の後半から出てくるということから、新キャラを説明する時間もなかった。
安藤は「湯婆婆と同じでいいんじゃないですか」と宮崎へ提案。
当初、指輪の数で分類しようという案もあったが、ややこしくなることから、まるっきり同じデザインとなった。
こうして、湯婆婆と銭婆は二人で一人という考え方をすることによって、双子という設定になったのだ。
ちなみに、二人の違いは、湯婆婆は胸元にイボが1つ、銭婆は胸元にイボが4つらしい。
これは本編中で確認できるのだろうか・・・