AIで動画作成する未来には、どのような壁が考えられるでしょうか。
例えば、長時間の動画生成を実現するための技術面での壁。あるいは フェイク動画 や意図しない動画を作れることになります。その未然防止には法の整備も壁になってくると考えられます。
今回は「技術面」と「法整備面」の2点でAIで動画生成する未来を検討します。
前回の記事と合わせてご覧ください。
AIで動画生成する技術革新
生成映像の品質向上と長尺化
動画生成AI 技術は急速に進化しています。画像生成AIと同様に、解像度や表現力が年単位で飛躍しています。例えば、商用モデルの Runway Gen-2 。半年足らずで大幅な品質向上を達成しました。現在は数秒~十数秒のクリップが主流です。今後は数分~数十分の連続映像を生成できるようになるでしょう。特にキャラクターや背景の一貫性を保つ技術が進展しています。2030年頃には、 短編アニメ や CM レベルの長さの映像をAIが作成できる可能性があります。
マルチモーダル&リアルタイム生成
将来的には、テキスト入力に加えてスケッチや映像クリップを基にした動画生成が可能になるでしょう。さらに、高性能な計算資源と最適化アルゴリズムにより、ほぼリアルタイムの 動画生成 も期待されます。例えば、Zoom会議中にAIが即座にハイライト動画を作成したり。あるいは、音声指示で編集が行われる技術が登場するかもしれません。これにより、従来時間を要したレンダリングや編集作業が大幅に短縮されるでしょう。
パーソナライズとインタラクティブ性
動画生成AIの進化は多くの未来を変えます。個々のユーザーに合わせたパーソナライズ動画が容易に作成可能になります。マーケティングでは顧客の属性ごとに異なる動画広告が提供されます。教育分野では学習者の進度に応じた説明動画が生成されるでしょう。ゲームやVR分野では、ユーザーのリアルタイム入力に応じて変化する映像が実現します。より没入感のある体験が可能となるかもしれません。
技術的・制度的課題
このような進化が見込まれる一方で、いくつかの課題も存在します。計算資源コストの高さや、学習に必要な動画データの確保が難しい点が挙げられます。また、著作権やトレーニングデータに由来するバイアスの問題も重要です。特に動画は画像以上にデータセットの準備が難しいです。大量の映像を学習させる際のライセンス問題が生じます。各国の法規制を考慮する必要があります。技術的・制度的課題を克服することが今後の普及の鍵となるでしょう。

法規制・倫理面の動向と影響
深フェイク規制とガイドライン
動画生成AIの発展に伴い、 ディープフェイク 対策が重要視されています。AIで生成・改変された動画が偽情報拡散やプライバシー侵害に使われるリスクが指摘されています。中国では2023年1月に世界初の包括的なディープフェイク規制が施行されました。「深度合成管理規定」です。この規定では、AI生成動画や音声への ラベル 付与を義務化しています。プラットフォーム事業者には監視責任が求められます。
欧米の動き
EUは2023年に AI規制法 ( AI Act )を合意し、深層合成コンテンツには出力メタデータの埋め込みが義務付けられました。米国では連邦法の整備は未完了ですが、カリフォルニア州では選挙関連での無断使用を禁じる法律が制定されました。主要AI企業も透明性確保のため、生成物への透かし埋め込み技術を研究し、米政府との合意により ウォーターマーク 導入が推奨されています。
日本の状況
日本では 動画生成AI を直接規制する法律はありませんが、名誉毀損罪や著作権法、わいせつ物頒布罪などで対応可能です。総務省は2023年の情報通信白書で「新技術の受け入れに慎重」と分析しながらも、健全な利活用に向けた環境整備の必要性を提言しています。今後、欧米の動きを踏まえ、日本でも ガイドライン 策定や法制化が進む可能性があります。
法規制の普及への影響
規制や倫理面の動向は、動画生成AIの普及に影響を与えます。規制対応の負担が企業の導入を遅らせる可能性がある一方、適切なルール整備により安心して技術を活用できる環境も整うでしょう。ラベル付与や透明性確保が定着すれば、消費者もAI生成コンテンツを適切に評価できます。重要なのは「悪用は避けつつ、有益な活用を進める」ことです。AI業界は自主的な倫理基準を設け、規制当局と協調しながら技術を発展させる必要があります。
詳細な技術動向についてはGartnerの予測をご覧ください。
次回は日本&世界における動画生成AI普及率の10年予測について実際の試算を行ってみます。