動画AI作成による日本の市場と世界の市場はどのように変わっていくのでしょうか。
今回は2025年からの10年間でどのように社会に普及していくかを実際に算出して検討していきます。
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日本市場と世界市場の違い
生成AI利用の現状
日本では 生成AI の利用が慎重に進んでいます。実態調査によると、「生成AIを使ったことがある」日本人は9.1%にとどまります。一方、米国は46.3%、中国は56.3%と大きな差があります。(AISMILEY.CO.JP)
企業レベルでも、業務で生成AIを利用する日本企業は46.8%です。米中の84%台と比較すると、普及は遅れています。主な要因は、「使い方がわからない」「必要性を感じない」といった認知・スキル面の課題や、情報漏洩・ 著作権 リスクへの懸念です。また、日本企業は新技術導入に慎重な傾向があり、日本語対応の遅れも影響しています。
生成AIへの潜在的関心
日本でも潜在的なニーズは高く、個人調査では「様々な用途で使いたい」と考える人が6~7割に上ります。2023年後半以降、ChatGPTなどのビジネス活用事例が増え、日本企業の姿勢も前向きに変化しつつあります。
特に、アニメ制作やゲーム開発での活用が注目されています。 Netflix の短編アニメ「犬と少年」では、背景美術に画像生成AIを活用し制作時間を短縮しました。また、ゲーム分野では背景映像やキャラクターモーションの自動生成にAIが導入されています。
日本市場の今後の展望
日本政府もAI分野への投資を本格化しています。今後10年間でAI研究開発・半導体に10兆円規模の投資を計画し、生成AIも重要視されています。(ULPA.JP)また、NTTや 国内スタートアップ が日本語対応のAI技術を開発中です。
海外企業も日本市場にローカライズしたサービス展開を進めています。現在は遅れていますが、日本は追い上げる潜在力が高く、2025年以降の導入増加が予想されます。2030年にかけて普及率は上昇し、世界との差を縮める可能性があります。
世界市場との比較
世界市場(特に米中欧)は、初期から高速で普及し、先行者利益を拡大する展開が予想されます。一方、日本市場はスロースタートながら、後半で成長を加速させる可能性があります。
ただし、法規制の影響で世界全体の足並みが揃う部分もあるでしょう。日本は技術吸収力が高いため、長期的には世界との差が縮まる可能性もあります。

日本&世界における動画AI作成普及率の10年予測
以上の分析を踏まえ、2025年から2035年にかけての動画AI作成普及率(採用率)の推移予測を示します。
動画AI作成の普及率予測(2025~2035年)
年度 | 日本市場(採用率) | 世界市場(採用率) |
---|---|---|
2025年 | 3% | 10% |
2026年 | 7% | 18% |
2027年 | 15% | 30% |
2028年 | 25% | 40% |
2029年 | 35% | 50% |
2030年 | 45% | 60% |
2031年 | 55% | 70% |
2032年 | 65% | 78% |
2033年 | 72% | 85% |
2034年 | 78% | 90% |
2035年 | 85% | 95% |
(※普及率は筆者による予測。日本市場は国内企業・クリエイターで動画AI作成ツールを利用する割合、世界市場は全世界での同様の割合を示す。数値は参考値であり不確実性を伴う)
動画AI作成普及の根拠
世界市場 は2030年前後に50%を超え、2035年までに約95%まで普及すると予測されています。企業のマーケティング部門では動画AI作成が当たり前になり、動画制作プロダクションもAIと人間クリエイターが協働する環境が一般化する見込みです。(GARTNER.COM)
日本市場は2030年頃まで世界より低い普及率で推移し、その後急速に追い上げると考えられます。普及が遅れる要因として、企業文化や法整備の影響が挙げられますが、 2025年 大阪万博 などの国際イベントが普及を後押しする可能性があります。
動画AI作成における3つの不確実性
- 技術進歩の影響:高品質な動画AI作成技術の早期実現で普及が加速する可能性。
- 規制や社会受容: ディープフェイク 対策が導入されることで一時的な停滞が発生する恐れ。
- 競争環境と価格:競争の激化によりコスト低下が進めば中小企業への浸透も加速。
2035年には、マーケティング・教育・エンタメ制作・SNSコンテンツなどあらゆる分野で動画AI作成が日常的に利用される社会が実現する可能性があります。(THELIVINGLIB.ORG)
おわりに
動画AI作成は、画像や文章の生成AIに続く次のフロンティアとして位置付けられ、その市場規模・普及率は今後10年間で急拡大すると予想されます。世界全体では需要の高さと技術競争の激しさから早期に普及が進み、日本も遅れを取り戻しつつ2030年代には広範な利用が定着する見込みです。
普及を支える要因は、コスト削減・効率向上という企業メリット、コンテンツ需要の拡大と個人嗜好の変化、そして技術革新による品質向上です。一方で、普及のためには倫理・法的課題への適切な対処も不可欠となります。
今後、大手IT企業の本格参入がさらなるイノベーションを促進し、動画AI作成があらゆる業界に浸透していくでしょう。特に、人間の創造性とAIの協働が進むことで、新たなコンテンツが次々と生まれる時代が到来します。
10年後、私たちが日常で目にする動画の多くがAIによって作られていたとしても、それはもはや特別なことではなく、「当たり前の風景」となっている可能性が高いのです。今後の技術の進展と社会への溶け込み方に注目し、適切に利活用していくことが求められます。